2017年5月24日水曜日

*ドールズ×渡辺えみさん インタビュー企画 1/4 えみさん⇨かよ


ドールズのお客さんである、ちぎり絵ライターの渡辺えみさん。
年に2回、「ポンポコパーティークラブマーケット」という手作り作家さんたちが出展するイベントを俳優の山脇唯さんとともに主催されています。
ドールズもポンポコパーティークラブマーケットの2回目に参加したことがあります。
いろいろご活躍されているえみさんですが、日頃から、ドールズ2人は、えみさんのインタビュー能力にも注目していました。
今回の企画では、えみさんから山本・上條それぞれにインタビューをしていただき、ドールズからも、えみさんにインタビューをしました。
そして、おまけ企画として、それぞれの谷中千駄木界隈で好きな食べもの(500円で買えるおいしいもの!)をご紹介します!

※4回に分けてブログに掲載いたします。
1回目、山本のインタビュー記事から。
谷中にお店を出すまでのことなどです!



〈渡辺→山本へのインタビュー〉

えみさん作 ちぎり絵・そっくりですね!


渡辺(以下、W):では、さっそくですが、美容師になろうと思ったきっかけを教えて下さい。

山本(以下、Y):高校生ぐらいまで、やりたいことがたくさんありすぎて、すごく迷っていた時に、小学1年生の頃に書いた「将来の夢」というタイトルの作文を見つけて、そこに、パーマ屋さんになりたいと書いてあったんです。やりたいことの中に、いつも美容師は入っていたので、これはきっかけだなと思って、両親にも相談してみたら、手に職をつけることを応援してくれたので、それでなってみたいなと思い、美容学校に行き、卒業して、迷うことなく美容室に就職しました。

W:それで、東京の美容室に?

Y:はい。東京の専門学校に通っていた時に、バイトしていた喫茶店のオーナーの髪型がいつも素敵だなと思って、どこの美容室に行っているのかを聞いて、その美容室に見学に行ってみたんです。その時に、スタイリストさんが、80代ぐらいのおばあちゃまの手を引きながらお見送りをしていて、おばあちゃまが、「ほんとにありがとうね」と何回も言いながら帰って行く姿を見て、すごくいいお店だなと思って、面接させていただいて就職できました。

W:それで、晴れて希望の美容室に就職することができて、そこで佳恵さんと出会ったんですね。

Y:はい、そこで出会いました(笑)。

W:初めて佳恵さんに会った時の印象は?

Y:初めて会ったのは、表参道駅の改札を出た所に、なんか、すごい目立っている人がいて、あ、気になるあの人! と思った人が上條さんだったんです(笑)。その日が美容室の顔合わせの日で、お店に行ったら、さっき見た気になる人がそこに座っていて、あれ? みたいな(笑)。

W:その美容室に何年勤めたんですか?

Y:8年半ぐらいです。

W:初めの頃は髪を切ったりはできないですよね? 髪を洗ったりとかするのですか?

Y:初めの頃は洗ったりもできなくて、掃除です。「フロアクリーン」という名のほうきでフロアを掃くということを、まずさせてもらって、営業後にシャンプーやブローの練習などをして、試験に合格すると、スタイリストデビューできるという流れです。

W:それは、どれぐらいの日数がかかるんですか?

Y:お店や人によるのですが、シャンプーに入るまでは、3、4ヶ月ぐらいかかると思います。

W:初めて切ったのは?

Y:いつだったんだろう…、記憶が定かではないんですけど、5、6年ぐらいかかったと思います。

W:結構、切るまでにかかるんですね。

Y:それまでは、営業後にモデルさんにお願いして練習していました。

W:初めて切ったお客さんのことは覚えていますか?

Y:覚えています。

W:どんな人でしたか?

Y:それは、本当に切ない思い出なんですけど(笑)、私は試験に合格とかではなく、ある日、急に先輩に「入って」と言われて入ったんです。そのお客様は、髪の毛が長くて多い女性の方でした。本来は、男性のカットからデビューするという決まりがあったのですが、私のできが、たぶん遅れていたからなのか入らせてくれて。女の人だけど入っていいよって言われて入ったのですけど、お客様に、「明日、誕生日なんです」って言われて、そんな大切な日に私ですみません! みたいな気持ちになって、手から汗が出て(笑)、冷や汗がすごかったっていう印象ですね。

W:冷や汗をかきながら、全力でカットしたわけですね。

Y:ドライヤー持っては汗、ハサミ持っては汗で、キラキラキラキラ手が光っていました。たぶん、お客様にもばれていたんだろうなって思います。

W:カットしながら、どんなことをしゃべっていたか覚えていますか?

Y:あたふたしすぎて、変なこと話していたと思います(笑)。

W:覚えていない?

Y:全然覚えていないです。「誕生日です」と言われたことが、ものすごいプレッシャーとなっていたので(笑)。

W:それからは、場数をこなすというか、何人も切ることで腕を上げていくという感じですよね。

Y:10年やったら一人前みたいな言葉があると思うのですが、10年経っても、一人前とは全然思わないんですけど、10年間は、わからないことがほんとにいっぱいありました。気持ちに余裕が持てるようになったのはここ数年で、20歳で入社して、独立して2年後の30歳の時も、まだ不安がすごくありましたし、お客様の反応がとても気になったりとか自信がない部分が今よりずっとあったんじゃないかなと、正直思います。

W:今は旅行に行ったり、感性を磨いたりする時間を作ることもできると思うのですが、自分のお店を持つまでは、そういう時間もとりにくかったですか?

Y:旅行にはほぼ行っていなくて、お休みはあまりなかったです。それでも吸収できる人は、もちろんいると思うのですけど、働いているなかで、美容師さん自身が感性を磨いていかないと仕事につながらないので、そういう時間を、もう少し作ることも考慮して、ドールズで展示したりすることもその1つなんですけど、お客様に喜んでいただきたいというのが半分、自分たち自身も、そういう感性に触れていたいというのが半分で、ゆくゆくは、ためになることをやっていきたいなと働きながら思っていました。

W:佳恵さんと一緒にお店を持ちたいという話が出たのは、自然のなりゆきだったんですか?

Y:そうですね。社長がいろいろな話をしてくれる人で、「オレは25歳で独立した」と話してくれていたので、25歳で独立しなきゃいけないって勝手に思っていて(笑)、24歳ぐらいから、一緒にやろうか? と佳恵さんと独立の話をし始めるようになり、交換日記を始めて、自分たちの考え方を整理するために、やりとりをし合っていました。

W:どんなことを書いていたんですか?

Y:どんなお店を作りたいかという意見のやりとりや、少しでもたくさんのお客様に付いていただく工夫などをやりとりしていました。あとは、サロンワーク中の反省点とか、自分のこういう所が足りなくてごめんねとかを、お互いに(笑)。あと、これは脱線するかもしれませんが、きっかけみたいなものがあって、ジョン・クラカワーの『荒野へ』という本が『イントゥ・ザ・ワイルド』というタイトルで映画化されていて、それを観たのが25、6歳の時で、その映画の中の言葉がずっと心に残っていて。

W:どんな言葉ですか?

Y:幸せとは、自分1人で得られるものではなく、他人と共感したことで初めて幸せと思える、というような言葉です。ちなみに、主人公は孤独死してしまいます。それを観た時に、ほんとにそうだなと共感して。自分だけがじゃなくて、佳恵さんも同じ気持ちでとか、お客様もとか、関わっている人がみんなで楽しいよねとか、がんばったねと思ってやれることが、たぶん一番楽しいんだろうなって思って。そこからは、ワーッと湧いてきて、こうやりたい! ってとまらなくなったんです(笑)。

W:後押ししてくれる言葉に出会ったんですね。

Y:はい。あとは、やっぱり高校の時の影響が私の場合はすごく大きくて、周りの人がおもしろい人が多かったんです。属さない人たちが多くて、個性をみんなで認め合うみたいな感じで、尊敬し合って友達づきあいをしていました。その時のことが結構大きかったというか、それまで、そういう人たちに会ったことがなかったので、そこで触発されて。働いている時も、仲良くさせてもらっていたお客様がいて、その人も個性を生かした仕事を推奨してくれていて、自分ができることを、それぞれしていった方がいいと思うという話をされていたことが心に残っていて、佳恵さんの良さと自分のできることを足していけたら、すごくいいなと思って、それからは、タカタカタカとパズルがそろっていった感じですね(笑)。

W:お店を開く場所の候補は、他にもあったのですか?

Y:前のお店は老舗だったので年齢層が幅広かったんです。なので、おばあちゃまとか自分たちの年齢層ではない人たちのカットやブローができたので、老若男女が集うような下町や地域密着でできる場所を探しました。

W:いくつか候補の場所はあったのですか?

Y:いくつかありました。それで、探しているときに、3.11があって、ちょっと探すのをとめたんですけど、頭の中を整理した時に、この場所はお客さんが来るから、ここがいいだろうというのではなくて、シンプルに好きな町でやりたいって思ったんです。明日があるかわからないみたいな気持ちになって。その時に2人で谷中に遊びに来た時のことを思い出して、あそこ、そういえば、いい町だったよねって話になって散歩に来て。さゆり美容室ってご存知ですか?

W:わかります。

Y:初めて谷中に来た時に、さゆり美容室を見て感動して、将来、ああいう一軒家で縁側があってみたいな感じのお店をやりたいなと思った記憶がよみがえってきて、そんな素敵な美容室がある町、いいなあと思っていたら、この場所が空いていて、すごく縁を感じたんです。

W:内装は自分たちと友人関係で一緒にやったんですよね?

Y:さっきの言葉に触発されて(笑)、いろんな人とやりたいなと思って。

W:お店で展示をやり始めたのは、オープンしてから、どれぐらいに?

Y:オープンしてすぐの頃からです。展示をやりたいと最初から思っていたので、最初の段階で始めました。

W:美容室で展示をすることは、他の美容室でもやっていた所があったのですか?

Y:近頃は、お洋服屋さんが一緒にカフェをやったり雑貨を売ったりもしていますし、美容室も雑貨を売ったりとかヘアアクセサリーを売ったりする所が結構多いなと思いますが、その当時は、どこもやっていなかったので、というか知らなかったので、新しいことを思いついた、やったー! というような気持ちでやりました(笑)。

W:自分たちで企画もして楽しんでいる美容室は、あんまりないですよね。

Y:そうかもしれないですね。誰かに任せたりしているかもしれませんね。

W:本当に好きじゃなかったら、企画を立てることもできないでしょうし。

Y:最近、お店を作ることが好きだなということに気がついたんです。

W:お店を作ることが好きというのは、たとえば喫茶店を作るとかではないですよね?

Y:そういうことではなくて、関わる人たちが、それぞれにできることを発揮できるような、そういうお店を作りたくて、自分は美容師という仕事ができるので、美容師という立ち位置ですけれど、それともう1つの顔で、お店という場所を作るという。趣味というものなのかもしれない(笑)。

W:話は変わりますが、好きなヘアアレンジやヘアスタイルはありますか? 

Y:昔の人の髪型や服装、ふるまい、言葉づかいなど、今みたいに情報があふれている時代ではなくて、毎日を丁寧に生きている時代の女性たちのヘアスタイルとか、その時代の女性の考え方や生き方に憧れがあります。

W:日本人ですか?

Y:日本人とか外国人とか思ったことはなくて、1920年代以降のファッションの歴史が好きで、それにともなう髪型の流れとかがおもしろくて好きです。髪型も好きなのですが、社会とともにヘアスタイルも変わっていくことがおもしろいと感じるので、そこだけ執着して好きというのではなくて、今の流行りとかトレンドも好きですし、これだけが好きという感じではないかもしれないですね。

W:1920年代というと?

Y:西洋だとコルセットを外して現代に近い服になったりとか、ファッションがイキイキしてくる時代の始まりで、日本だと明治と大正の間あたりの大正ロマンとかモボモガとか。

W:日本髪ではなくなった頃?

Y:長くて結い上げていた髪の毛が短くなってくる時代ですかね。西洋の文化を取り入れ始めて、おしゃれを楽しむ時代になっていって。竹久夢二とかも好きです。

W:この先、美容室をやりながら、こんな風になっていきたいなというイメージはありますか?

Y:これからは、気持ちの面で隙間を持って快適に仕事を続けたいです。答えになっているのかな(笑)? 独立して、5、6年やってきて、これは無理しているなとか、もっといけるなとかが段々わかってきたので、わかってきたからこそ、より良い働き方とか楽しく仕事を続けることをしていきたいです。

W:気持ちの面での隙間というのは、もうちょっと、こういう時間があったらいいなとか、そういうことですか?

Y:時間というよりも、引き出しにパンパンにモノを詰めているような感じではなくて、8割とか9割ぐらい詰めておいて、あとは何もしなくていいとか、脳みそに少し余白を作りたいなと思っていて。性格もあるのですけど、今はいろいろ考えてやりたくなっちゃうし、お客様もたくさんカットしたい! とか、したいしたいが多過ぎて、ちょっと隙間がなくなっちゃってるなと感じるので、その調整を(笑)。

W:リラックスする時間を作りたいということ?

Y:というより、余白時間を作って考え方をもうちょっと柔軟にして働きたいなと思っています。

W:考え方を柔軟にしたいなという出来事があったのですか?

Y:昨日、知人に、「佳代さん、いつもマジですよね」って言われまして(笑)、たしかに、力が入っちゃうので、もうちょっとリラックスしたいです。でも、それを佳恵さんに言ったら、「仕事で力抜いたら、あんまり良くないんじゃない?」と言われて(笑)。なんていうんだろう、力んでいる気がする(笑)。

W:つい本気になっちゃうみたいな?

Y:そうですね。もう少し深呼吸したいなと。いつも過呼吸みたいな(笑)。その分、家ですごく怠惰になっちゃってるので、家でも仕事でも同じぐらいにしたいです。ちょうどよく力み、ちょうどよく緩める。仕事というか、生き方を(笑)。

W:これからは、お店としてはどんな所に向かっていきたいですか? 

Y:今年は、あえて長い先の計画はせずにいようと思っています。あとは、「人と人とのつながりで、笑顔をたくさん送り出せるお店をめざす」というのが、ドールズのコンセプトの1つなので、人を介して何かをすることは続けたいし、笑顔をいっぱい送り出せるお店でいたいというのは変わらずに思っています。

W:最後に、佳恵さんへメッセージをお願いします。

Y:いつもありがとうございます。お互いにないものをおぎない合いながら、これからも仲良くやっていきましょう。

W:佳恵さんの良い部分を教えて下さい。

Y:心が広い。そして、聞き上手。本人は頑固だと言っていますが、私はそうは思わなくて。ちゃんと意見も言ってくれるんですけど、柔軟に楽しんでくれる。私みたいに前しか見えなくなる人を支えてくれています。

W:今日は、いろいろお話を聴かせていただき、ありがとうございました。


Y:こちらこそ、ありがとうございました!




インタビューを終えての山本の感想⇨「私ってほんと話すのが好きだなあ。」

ここまで読んでくださった全ての方々、ありがとうございました!



谷中ドールズ
09061858409


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